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調光システム納入事例〈ホール〉本杉氏: LED化の最大の課題のひとつは"フェーダ問題"です。照明技術者がフェーダ操作に慣れており、LEDの操作方法とは異なることに抵抗感がある。 特に地方等では、仕込みから撤去まで一人で担当する現場も多く、急な変化は受け入れられにくい印象があります。しかし今回は、実際に舞台で働く技術者とその会社が、ポピュラー音楽などのツアー公演にも慣れていたこともあり、比較的抵抗なく受け入れてくれました。服部氏: 日本の多くのホールでは、朝9時から仕込み、10:30に開演し、その後のオペレーションはもちろん、音響や大道具まで1人で担当するケースも珍しくありません。そのような中に新たな操作方法を導入しても、現場では対応が難しいのが実情です。 今回は従来のフェーダ操作感覚でLEDを制御できる調光操作卓を導入しました。これにより、現場での運用がようやく現実のものとなったのです。 ただ、この状態が永続するとは限りません。今後はLED照明をどう制御するか、その理解を深める段階に入っていくべきです。 それには技術者だけでなく、施設側や行政の理解も不可欠。「LEDを入れて終わり」ではなく、使いこなして舞台表現につなげるための仕組みづくりが必要です。 このホールが、その意識改革のきっかけになればと期待しています。本杉氏:当初は、大ホールには従来のハロゲン器具を使い、中ホールにできるだけLEDを入れるという構想で、初期計画を立案しました。 しかし市側の大ホールへの期待は、福岡市民会館の利用実態を踏まえ、外部からの受け入れに配慮したホールとしての運用であること、その一方で、中ホール・小ホールは市民団体中心の利用であるという現実を踏まえ、方針を見直すことにしました。 服部さんや関係者と照明方針を整理した結果、大ホールをオールLED化し、中ホールは従来型ハロゲンも使うハイブリッド型が現実的という結論に至りました。 ここで問題になったのはコスト。予算の制約が器具台数等に直結するため、照明計画全体の見直しが始まりました。 そこでまず、持ち込み機材の多い公演を除いて、この大ホールで最も高度な演出照明が求められる「バレエ」を基準に据え、照明設計の再構築に着手しました。服部氏: 今回の大きなポイントは、舞台運営を担う会社が既に決まっていた(我々のコンソーシアムではないが一体で動けた)点です。運営会社が旧福岡市民会館の運営に携わっていたことから、既存器具の再利用の可否判断をしていただけたのも大きかったです。 これはPFIによる新しい取り組みのなかで、会館の性質を事前に決定できた良い事例だったと思います。 大ホールの使用が外部からの持ち込みを前提とするなら、全国ツアーに対応できる空間・機構・構造の充実があれば十分。そうした発想への転換ができたのも、運営と一体で動けたことが大きかったですね。照明構想の逆転劇!「大ホール=オールLED」へLED化への道∼現実と現場の間で∼福岡市民ホールに見るLED舞台演出照明の今と未来。オールLED化された大ホール(音響反射板設置時)使い慣れた操作環境でLEDカラー制御とディマー制御が可能な調光操作卓「JASTO-P3W」対×談劇場計画研究/工学博士日本大学名誉教授本杉省三様株式会社ライティングカンパニーあかり組 顧問服部基様
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調光システム納入事例〈ホール〉本杉氏: ボーダーライトは、これまでの使い方を越えた幅広い利用、演出照明の可能性があるとおっしゃっていましたが、具体的にはどういうことなのですか?従来のハロゲン光源のものからLED化されたことで、どのような変化が起きると予感されているのでしょう?服部氏: そうですね。日本の劇場では「ボーダー1∼4まであるのが当然」という認識がありますが、実際には日舞やバレエでしか使わないことも多いです。欧州ではボーダーライトは作業灯として捉えられており、日本でも逆光や足元照明などとしての用途が主になっています。 今回のホールではフルカラーのLEDボーダーライトを導入し、それを空間演出の照明として位置づけました。従来の名称を使いつつも、役割が変わっていくという認識が必要だと感じています。本杉氏:ポピュラー音楽のツアーに限らず、演劇の旅公演などでも、LEDやムービング主体で、操作卓もそれに適したものが使われています。オペラでもその傾向があり、新国立劇場を見てもムービングだらけです。英国ロイヤル・バレエ団の劇場でも、今後はすべてLED照明とLEDムービングライトによる演出になるようですね。服部氏: 日本でも5年以内に多くの劇場がオールLED化されると思います。直近で携わった劇場では、すべて多回路で整えるのは非現実的なため、可搬型調光器を用いた分配で柔軟な回路配置を実現してきました。 これにより、100V直電源を各所に備えたことになるので、リニューアル時のLED導入もスムーズになるでしょう。 今後は器具と調光卓の整備さえ進めば、技術的には大きなハードルはないと考えています。本杉氏: LED照明器具にはなかなか難しい課題があり、これまで積極的に導入することにためらいがありました。 器具としての課題には、これまでどのような点がありましたか?服部氏: ひとつはフェードイン・フェードアウトの問題です。 以前は、暗転から10%のあかりまで20秒かけてフェードインするような演出が難しかったですね。もうひとつは、色温度の問題です。3150Kの白い光で、Ra80以上でも、グリーンやパープルがかかったりする器具が多かった。Raの数値をクリアしているのに「舞台で使うと違和感がある」と感じていた時もありました。 また、初期LEDは発光面が小さく、輝度が高すぎたため、フロントシーリングでは演者の目に刺さるような不快感があり、敬遠されがちでした。しかし、今回導入したLEDスポットライトは光源面が広く、まぶしさが軽減され、幕前でも「使える」と初めて感じられるレベルになっていました。 さらに、色変化時の黒体軌跡の問題もあります。 例えば紫から赤に変えるとき、白を経由するため、滑らかな色変化が困難でした。特にロアーホリゾントでは連続性が重要な演出に支障が出やすかった。 今回導入したアッパー・ロアーホリゾントは、カラー表現が進化しており、美しいグラデーションが作れるようになっていて驚きました。LEDの現在地∼表現と照明の関係∼名称の再定義が必要なLEDボーダーライト本杉氏: 舞台照明におけるLED化は、もう随分前から過渡期にあるということで、それを言い訳に公共ホールではなかなか技術的進化が進んで来なかった気がします。これを機に大きく前進してほしいですし、LEDの利点を生かした開発を加速してほしいと思っています。LED化により、調光しても色味が変わらないのが大きな特徴だと伺いましたが。服部氏: 物の色は照らす光の質によって大きく変わります。 演色性の高いLEDは、自然な色を見せるという点で非常に優れています。 また、#201でインテンシティ15%程度の淡い色に、今までにない美しさが現れるようになりました。これはタングステンでは難しかった表現です。 一方で、調光しても赤みが出ないことを課題とする声もあります。ただし、自然光では光量が変わっても色温度は変わりません。太陽や月の光は明るさが変わっても色温度は変わらないのです。 焚き火のような赤くなる光は特殊な例であり、すべての照明がそれを再現する必要はないと考えています。 シーンに応じて色温度の異なる照明を使い分けることで、より自然な演出が可能です。 LED化は、技術者が光の本質を改めて考える良い機会になると期待しています。LED化で生まれたあかりの新たな魅力オールLED化された大ホール・第1シーリングライト


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