ステージ＆エンターテイメントライティング 181-182(182-183)

181調光システムの機能と構成舞台システムの構成舞台におけるすばらしい情景・動きに合わせた光の交錯、空想の世界の創造、これらは種々の舞台照明器具を駆使することで実現できますが、その中心をなすのは調光システムです。調光システムは、下記のように構成されています。①主幹部（主幹盤）電源より電気を受ける部分で、主幹開閉器を通して各部へ電気を分配します。②調光部（調光器盤）操作部からの微弱な電気信号により、負荷電流を制御し、照明器具の調光をする心臓部です。この調光部はユニット化されており、その電流容量により、20Ａ、30Ａ、40Ａのものが一般に使用されています。調光ユニットと負荷回路調光盤の開閉、調光ユニット保護のための配線用遮断器を設けてあります。③操作部（調光操作卓）調光をコントロールする部分です。調光ユニットの電流をコントロールするため、各種のフェーダやそれらを組み合わせるための切り替えスイッチ、また電子回路部や操作スイッチから成っています。●パッチ操作部（調光操作卓）操作フェーダ（または操作チャンネル）と調光ユニットとの選択接続を行う部分で、その方式には、各種ありますが、照明操作の上で欠くことのできない機能です。●記憶操作部（調光操作卓）操作フェーダ（または操作チャンネル）で設定したあかりをシーンデータとして記憶し、それを再生する操作機能です。ステージでは、種々のセットや演出照明器具を使い、空間の内に自然界を再現したり、空想の世界を創造します。それら人工的に創造された世界に、時間の変化を与えようとする際、調光システムは大変重要な役割を果たします。調光システムは場面の溶暗、溶明、暗転、明転、急転、緩転、色調の変化等や、個々の照明器具を任意に点滅・調光するなどの要求を充分に満足させられるものでなければなりません。例えば、ステージ上に地平線がぼうっと白んできて次に赤みが射し、そしてますます橙色が増してくるといった日の出から夕焼け、日没までの空間の時間的変化の演出です。空間デザインに時間デザインの要素を加えた斬新・多彩な照明表現、高度な照明制御技術が、照明デザイナーのクリエイティビティを刺激し、舞台照明演出の世界に新たな可能性と創造性を提供します。●ＤＭＸ512信号システムDMX512／1990という信号伝送システムは、調光操作卓から調光装置に送られる信号を共通化するために米国劇場技術協会（USITT）が規格化したもので、信号形態は、多重信号伝送のうち、シリアル転送（直列転送）《マルチプレックス・トランスミッション＝多重伝送》といわれる、多種類のデータを2線あるいは3線などの少数の信号線で伝送できるシステムです。DMX信号はマルチプレックス・トランスミッション方式のうち、時分割方式という、信号線に供給する電気信号の順列を決めて、繰り返し送信し、受信側でそのデータの順列を確認して受信する方式です。代表的なものが、EIA規格で定められたコンピュータ・ネットワークに用いられているRS-232Cがあり、DMX信号は、その上位規格であるRS-485の規格に準じており、高速で長距離にデータを送ることができる通信インターフェースです。DMX512信号は、時分割方式デジタル信号であり、各機器間をワンケーブルで配線するだけの省施工となります。●ネットワーク化DMX512信号をイーサネットに変換し、イントラネット、インターネットを介して情報を伝える調光ネットワークシステムの構築が進んでいます。これは劇場・ホールのネットワーク化により、調光制御信号以外に、ネットワーク上の調光卓・調光盤・昇降装置・ホール内の管理サーバー、ネットワークPC等の間で、双方向による情報のやり取りを行い、バーチャルシミュレーションソフト等、様々な新しい技術をネットワーク上に展開し、より先進的で感覚的な調光制御機器操作を実現しています。また、必要な情報を適時にユーザーへ積極的に提示し、調光システム全体の安全性の向上も実現します。さらには、エンジニアリング会社とのメンテナンス契約等により、インターネットを介してリモート監視を行うことで、トラブル回避や万一の故障時のより迅速な対応を可能にしています。電源照明器具（主幹盤）（調光器盤）調光部操作部（調光操作卓）主幹部調光装置調光システムの構成図調光システムのネットワーク化パナソニックLSエンジニアリング（株）センターサーバ